保育士求人によくある疑問と質問について解説

保育士求人サイトと人材紹介の闇と呼ばれるこの2つを保育業界の専門家が暴露という形で解説していきます

保育士の処遇改善費報道について解説

★保育士の処遇改善費の交付金についての報道解説

 

【結論】

別に、そんなに騒ぐような問題ではない。

むしろ情報を流すならこのブログくらい解説しなさいよ。

ですw

 

f:id:maru-hoiku:20191231142745j:plain

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191229/k10012231681000.html

 

保育士の賃金を増やすため国などが平成29年度までの2年間に保育施設に支出した交付金のうち7億円余りが、実際は賃金の上乗せに使われていないか、または使われていない可能性の高いことが会計検査院の調査で分かりました。

保育人材を確保するため、国は保育施設の運営費について、勤めている保育士の平均の勤続年数や役職などに応じて加算をつけ保育士の賃金を増やすことを目的とした交付金を支払っています。

この交付金が適切に使われたか、会計検査院平成28年度と29年度分について全国の保育施設のうち6000か所余りを抽出して調べたところ、延べ660の施設で合わせて7億1900万円余りが実際は賃金の上乗せに使われていないか、または使われていない可能性の高いことが分かったということです。

その理由について多くの保育施設は「失念していた」と回答したということです。

会計検査院内閣府を通じて市町村に、交付金が適切に使われているかどうか確認や指導を行うよう求めています。

内閣府は、「あってはならないことで適切に使われるよう指導していきたい」としています。

 

 

★現場の保育士さんたちの反応は!?

 

この報道を受けてTwitterFacebookなどでは・・・

 

『ふざけるな!』

『株主や経営者にお金が行っているのでは意味がない』

『いったいそのお金はどこにいっているの!?』

 

と、当然、怒りor疑問の声が殺到しましたが・・・実はこの処遇改善費について実際に『現場の保育士さん』はどの程度理解をしているのでしょうか。実は今回の報道のポイントはここにあると私は思っています。

 

そして・・・私は申し訳ないのですがこの報道を受けてもそんなに驚きませんでした。

 

それは上述の記事につけた青色赤色の部分が関係しているからです。

 

 

★今回の保育士への処遇改善費が適切に使用されていなかった理由とは…。

 

 

①、保育園側が適切に処理をしていなかった。

これは当然保育園側の問題でもあるのですが・・・保育士の処遇改善費については、その年度に支払った処遇改善費の補助金を受け取る条件として、各区市町村に対して支払い報告書に添付して『賃金台帳or支払い証明書』を提出することが義務付けになっているはずなんです

 

つまり①の部分で不正があった場合は、保育所が設置されている区市町村の保育課の担当者の職務怠慢ということになります。

 

ここでちゃんと処理されていれば①の問題は発生しません。

 

(そもそも処遇改善費は法人の役員には支給されないというルールなので、理事長や株式会社の本部にお金は流れない仕組みになっているはずです。)

 

 

 

②-1、保育園側は処遇改善費の補助金を使う義務はない。

これが一番驚かれるのですが、、、保育士へ支給される処遇改善費の補助金については、その補助金を使うかどうかはその法人に任せられており、極論から言えば1円も受け取らなくでも法的に全く問題はありません。

 

 

②-2、処遇改善費については十分なスケジュールを与えられていなかった

処遇改善費について初年度は満額を受け取る手続きを取ることが出来なかった法人が多かったことを知らない現場の保育士さんは多いのではないでしょうか。

 

実はこの処遇改善費については制度が見切り発車に近いものがあり、支払い計画ならびに適切な処理等の情報がとても急でした。

 

実際に支払われる処遇改善費金額は人事院勧告というものによって決定されるので、この決定が発表されるまでは正確な金額はわからない。

 

そして初年度は処遇改善についての連絡や金額の決定がとても遅くなり、法人側は対応に追われることになりました。

(この年の保育園運営者は本当に大変でした。)

 

社会福祉法人では就業規則上、定められていない給与支払いは出来ないといったルールや、自治体によっては『処遇改善費は支払わなければいけないものではないので3月末までに処理できなければ役所側も支払いません』と突っぱねた所もありました。

 

その結果、処遇改善費が支給となった最初の年は満額支給されていない法人も少なくなかったはずですから、当然予算は余るはずです。私の法人では特例で区に認めてもらい、実際に支給したのは翌年度の5月になりました。

 

(ちなみに区市町村の保育課も、正確な情報が入ってこないことで、この対応には本当に大変だったと話していました。)

 

 

 ②-3、とにかく手続きや計算が大変だった

初年は上述のように十分な情報や時間がないために、多くの自治体が苦労しました。特に予算があまりない地方で、経営陣がご高齢の方は本当に理解に苦しんだことでしょう。

 

またこのような計算を税理士や社労士に頼むと、保育園のような小さい規模での契約の場合、追加で費用を払うことにもなります。このような事務計上費は補助金対象外の為、その結果、この年は支払いを見送るという法人もありました。

 

 

 ②-4、保育士の給与格差によるトラブル回避

これは処遇改善Ⅱの初期の話にもなりますが、理事を兼ねた園長には支給されない。また処遇改善Ⅱでは園長、主任には支給されないという当初の規定があったため、給与分配における法人内トラブルを避ける為に補助金を見送った法人もありました。

(今では処遇改善ⅰとⅡの調整が可能なのでこのようなトラブルは改善)

 

 

 

②の内容により『保育士が不足していない地方の保育園は処遇改善費を見送るor満額支給しない』

 

 

これは実際によく聞く話です。理由は。。。

 

『余計なことをして新たな労力とトラブルを生みたくない』

補助金を超えた場合の支給額は法人の自己負担になるので、経営が圧迫してしまう可能性がある』

 

など。

 

東京や神奈川などの保育士不足の地域では保育士を確保するために、給料を少しでもあげようと努力をします。実際に他の法人は処遇改善費や地域加算等を満額支払っていて、自分の法人に補助金を活用しなければ年収で30~80万以上変わる保育士も出てきます。多少の法人負担も問題ありません。

 

しかし地方であれば、保育士は不足していませんから、それほど処遇改善費について重要視していないという保育園もあるのです。

(これを聞いたら地方の保育士さんは間違いなく怒りますよね。ですがこれは支給初年度の話で、今は十分な知識を役所も持っているので大分改善されています。)

 

 

 

★保育士の処遇改善手当が支給されないことの本当の問題点とは

 

処遇改善費は消費税が8%に増税した分から出ていることを皆さんはご存知ですか??

 

今、各省庁は予算を削減されている中で、保育業界は増税分を使って優遇されているというのが今の現状です。

 

その為、もし予め支給される予定だった予算が余った場合は保育業界には不要とみられてしまい、今後は保育業界に回してもらう予算がカットされてしまう可能性があるということです

 

今回は平成28年・29年度ということで見切り発車的な時期だった統計なのでそれほど重要なことではありません。

 

肝心なのは平成30年以降に正しく保育園で処遇改善費を保育士に支給されているかということ。もしいまだに正しく支給されていない保育園があるのであれば、それは転職を検討することも必要ですし、、、何より折角つかんだ保育士の処遇改善の機会を手放してしまうことになります。

 

今回の報道を機に、是非、現場の保育士さんも処遇改善費に関する知識を深めてみてくださいね!!